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ニカイア・コンスタンティノポリス信条

ニカイア・コンスタンティノポリス信条


わたしたちは1 、唯一の神、全能の父、天と地、見えるものと見えないものすベて

のものの造り主2を信じます。

 

そして、唯一の主イエス・キリストを〔信じます〕。〔主は〕独り子である神の子3、

すべての時に4先立って父から生れた、(神からの神5)光からの光、まことの神か

らのまことの神、造られたのではなく生まれ、父と同じ本質6 であって、すべてのも

のはこの方によって成りました7 。この方はわたしたち人間のために、またわたした

ちの救いのために天から降り、聖霊とおとめマリアから8 肉体を受けて9 人となり、わ

たしたちのためにポンテオ・ピラトの時に10 十字架につけられ、苦しみを受け、葬ら

れ、聖書のとおり三日目によみがえり、天に昇り、父の右に座し、生きている者と死

んだ者とを裁くために、栄光のうちに再び来られます。その国11 には終わりがありま

せん12。

 また、聖霊を〔信じます〕。〔聖霊は〕主であり、命を造る方13 で、父(と子14 )

から出て、父と子と共に礼拝され、栄光を受けられ15 、預言者たちをとおして語られ

ました。また唯一の、聖なる、公同の、使徒的教会を〔信じます〕。罪の赦しのため

の唯一の洗礼を告白します。死んだ者のよみがえりと、来たるべき世の命を待ち望み

ます。

アーメン。

 

 

【凡例】

*〔 〕は、原文にないが、文の続きを理解できるようにするため付加したもの。

*( )は、ギリシャ語原文にはなく、ラテン語原文から付加したもの。

【底本】 ここでは下記の「ギリシャ語原文」を使用した

*A.Hahn:Bibliothek der Synbole und Glaubensregeln der alten kirche.1962

*H.Denzinger(ed.):Enchiridion Symbolurum.1965

(但し、上記二書は日本キリスト教会「信仰と制度に関する委員会」編、『ニカイア

信条』(原文ならびに欧文訳文集)から)

*P.Schaff:The Creeds of Christendom.1931

【参照した翻訳】 +は重訳(可能性含む)

〈文語〉

*日本ハリストス正教会教団、『主日報事式』、1994、186頁

*土屋吉正、『ミサーその意味と歴史ー』、1984、あかし書房、42頁

*東京基督教研究所、『基本信条』、1946、新教出版社、11~12頁

*日本基督教協議会文書事業部、『信条集』前篇、1982、新教出版社、6頁

*日本基督教会教義研究委員会、『1969年度教義研究委員会 参考資料』、2頁

*渡辺信夫、『古代教会の信仰告白』、2002、新教出版社、148~150頁

*関川泰寛、『ニカイア信条講解-キリスト教の精髄』、1995、教文館、8頁

*磯部理一郎、『わたくしたちの「信条集」』、1994、ナザレ企画、24~25頁

*森本あんり、『使徒信条-エキュメニカルなシンボルをめぐる神学黙想』、

1995、

新教出版社、134~135頁

+ロッホマン、『講解・使徒信条』、1996、ヨルダン社、13頁

+F.ヤング、『ニカイア信条・使徒信条入門』、2009、教文館、28~29頁

〈口語〉

*『ともにささげるミサーミサ式次第 会衆用』、2006、オリエンス宗教研究所

(2004年、日本カトリック司教協議会認可)、22頁

*小高毅、『クレド〈わたしは信じます〉』、2010、教友社、117~118頁

*日本聖公会管区事務所、『日本聖公会 改正 祈祷書』、1986、165~166頁

*日本福音ルーテル教会信条集専門委員会、『一致信条集』、1982、聖文舎、23頁

*日本福音ルーテル教会・日本ルーテル教団共同式文委員会、『ルーテル教会式

文』、1996、30頁

*日本基督教団讃美歌委員会、『讃美歌21』93-4-2、日本基督教団出版局、

147頁

*日本基督教団改革長老教会協議会教会研究所、関川泰寛、『聖霊と教会―実践的教

会形成論』付録①、2001、教文館、251頁

*日本キリスト教会信仰と制度に関する委員会、『日本キリスト教会第52回大会記

録』、2002(第52回大会承認)、85頁

*小高毅編、『原典 古代キリスト教思想史』2ギリシャ教父、教文館、246~247

*有賀文彦、『ニカイア信条を学ぶ』(「日曜学校」信徒養成講座)、2001、日本

キリスト教会大会教育委員会、21頁

+デンツィンガー編、『カトリック教会文書資料集』〈信経および信仰と道徳に関す

る定義集〉1988、エンデルレ書店、38頁

+N.P,タナー、『教会会議の歴史』、2003、教文館、41頁

 

【脚注】

1 ギリシャ語原文は「わたしたち」(一人称複数)だが、ラテン語原文では「わた

し」(一人称単数)とするものもあり、西方教会(カトリック、ルーテル教会な

ど)では典礼に際して「わたし」と唱える伝統がある。

2 ギリシャ語原文のうちデンツィンガーでは、「唯一の神、全能の父、天地と地の造

り主、見えるものと見えないもののすべて」という語順で、それぞれカンマで区切

られているので、そのように訳した。そのような訳が多いが、語順を変えて、「造

り主(創造主)」から訳す例もある(ルーテル、東京基督研究所)

3 原文は「独り子である神の子」と二語に区別されている。同格なので、この二つを

一つにまとめて訳している訳(神の独り子またはひとり子など)が多いが、ここで

は区別して訳した。

4 「万世(よろずよ)、あらゆる世、すべての世、あらゆる代」といった訳が多い

が、ここでは「すべての時」と訳した。すべての時代・時間に先立ってという意

味。

5 「神からの神」は、ギリシャ語原文にはないが、ラテン語原文にあるものもある。

採用しているのは下記21種のうち、カトリック(文語、口語)、ルーテル、聖公

会、ロッホマン、東京基督教研究所、NCC、また括弧付で磯部だけであるが採用

した。

6 「ホモウシオス」という、この信条中最重要の言葉で、多くは「同質」と訳す。他

には「一体」(正教会、カトリック、聖公会、デンツィンガー、ロッホマン)、

「同一本質」(磯部、タナー)、「同一実体」(ヤング)、「同一本体」(小

高)、「本質を一つにし」(東京基督教研究所)、「おなじ本質」(日本キリスト

教会2002年版)とあるが、ここでは「同じ本質」と訳した。

7 原語は、ヨハネ1章3節と同じで「(存在するように)成った」。同じ訳は、関

川、信条集、ヤング。多くの翻訳では「造られた」と訳している。

8 多くは「聖霊によっておとめマリアより(から)」と、聖霊からの由来とマリアに

よる由来とを区別して訳す。しかし原文は「聖霊とおとめマリアから」となってお

り両者を併記する訳もある(正教会、森本、小高、信条集、タナー)。そう直訳し

た。

9 「肉体をとって」と「肉体を受けて」が半々する。「受肉」の出来事が告白されて

いるので、後者(受けて)で訳した。デンツィンガーは「受肉し」と訳す。

10 多くは「ピラトのもとで」と訳し、使徒信条(文語)とも合致するが、「の時」と

訳した。同じ訳をするのは、正教会と信条集。

11 原文は「王国」または「支配」、「神の国、御国」のこと。

12 他の翻訳はほとんど「終わることがない」と訳すが、直訳して「終わりがない」と

した。同じ訳をするのは、正教会と小高。

13 多くは「命を与える」と訳す。信条集は「活かし」、正教会は「生命を施す者」、

森本は「生命を造るもの」と訳す。ここでは直訳で、「命を造る方」とした。

14 この信条のもう一つの重要点である、フィリオクエ(子から)。ギリシャ語原文に

はなく、西方教会でラテン語原文に後に付加された部分。東西教会分裂の契機の一

つともなった箇所で、エキュメニカルな立場から近年は西方教会でも削除して告白

する傾向があるが、西方神学にとって重要な部分と考えるので、括弧付で付加し

た。

15 ここでは「栄光を受けられ」と訳した。他に「栄光を帰せられ」(NCC、小高、

東京基督教研究所、日基教会1968年版)、「讃(ほ)められ」(正教会)、「あ

がめられ・ 崇められ」(カトリック文語、教団、ルーテル、聖公会、日基教会

2002年版、ロッホマン、磯部、信条集、有賀)、「頌(ほ)め讃(たた)えら

れ」(森本)、「尊ばれる」(デンツィンガー)と訳されている。