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聖霊の力による使徒の働きと教会の発展(使徒言行録講解) 第56講:雌伏の十年間のパウロ(使徒言行録11章19~30節-2)

聖霊の力による使徒の働きと教会の発展(使徒言行録講解)

56講:雌伏の十年間のパウロ(使徒言行録111930節-2)

 

〔今週の御言葉 使徒111930節(2)雌伏の十年間のパウロ

タルソスに戻ったサウロが何をしていたかについて、使徒言行録は沈黙します。サウロは、「シリアおよびキリキアの地方」に行ったことが分かります。しかしそこでの伝道の成果についてパウロ自身も沈黙し、おそらくは見るべき成果を上げることのない、一見すると不毛な働きだったのかもしれません。サウロはじりじりと焦る気持ちや焦燥感に駆られたかもしれません。異邦人の使徒として召されながら、福音宣教をするのだけれど、アラビアでの働きも含めて異邦人に対する福音宣教の働きは、ことごとく失敗に終わっており、自分がこれからどうしたら良いのか、先が見えずに暗中模索し、「空を打つような拳闘」をしているように感じていたかもしれません。そのような中で十年が過ぎ、サウロはこれから自分がどうしていったら良いか、先が分からない中で、いたずらに時間を空費しているように感じていたかもしれません。しかしこうした、何もなかった十年間こそ、パウロにとってなくてはならない貴重な時間なのでした。自分に対する溢れる自信と自負の思いがとことん砕かれ、自分の力によってではなく、主の力によって福音宣教をするということ、そのために「待つ」ということを教えられていったのでした。待つことで、自分自身の中で物事が熟成されていきます。この熟成こそ、パウロに必要なことでした。「落ち着いて、静かにしていなさい。」このことこそ、日々を忙しく働くわたしたちに必要なことなのです。